台湾高速鉄道建設までの道のり 「路(ルウ) ~ 台湾エクスプレス ~」

日台共同制作ドラマ「路(ルウ) ~ 台湾エクスプレス ~」の背景となっている台湾高速鉄道について、今回は少し詳しくお伝えしていきたいと思っています。

ドラマ「路(ルウ)」で出てくる台湾高速鉄道は、現在台湾では「高鉄」と呼ばれています。また高速鉄道の英語、High Speed Railwayの頭文字をそれぞれとってHSRとも表記がされます。
台湾には主に「MRT」「台鉄」「高鉄(台湾高速鉄道)」の3つの種類の電車があります。

MRTは地下鉄で、台湾では2つの都市(台北7路線と高雄2路線)のみ走っています。台鉄は国有鉄道である台湾鉄道を指し、在来線や特急電車が含まれます。台鉄は日本とも関わりが深く、日本統治時代には鉄道整備を重要投資と位置づけ、台湾の近代化を進めるのに大きな役割を果たしたとも言われています。
そして、「路(ルウ)」の建設プロジェクトのテーマとなった高鉄(台湾高速鉄道)は、最高時速300kmを超える速度で走り、日本の新幹線の技術が導入されています。

当初の予定していた運行開始は2005年10月でしたが、途中2度にわたる延期を経て、台湾高速鉄道は2007年1月に運行を開始しました。
台湾の人口約2,300万人に対し、年間4,700万人以上によって利用され、今では台湾の移動を支える交通インフラとなっています。

台湾高速鉄道は首都台北から第2の都市高雄を結び、途中台湾の主要都市を繋ぎます。全長は345km、総距離としては東京〜名古屋間の東海道新幹線とほぼ同じとなります。
※現在は台北駅から10km延伸され、南港駅が最北となっています。

Hopetrip.com.hkより

2007年に台湾高速鉄道が開業される前は、台北から高雄への移動は台鉄の特急電車が一番速く、それでも4時間近い時間がかかりました。
この建設によって、それが1時間半へと一気に短縮され、人々の移動は遥かにしやすいものとなりました。
台湾高速鉄道の構想が上がったのは1989年であり、その後18年もの歳月をかけて完成しました。総事業費は1兆8000億円にものぼり、台湾の一大事業となりました。

日本が車両システムを受注しているため、使用されている車両は東海道・山陽新幹線で運転されている700系をベースに開発されています。
日本の700系と比べると、台湾高速鉄道では先頭部分の形状はよりシャープなものとなっていますが、外観もよく似ています。車体は白地にオレンジの鮮やかな線が特徴です。

鐵貓「台灣高鐵700T型列車」より

鐵貓「台灣高鐵700T型列車」より

経緯

はじまりは1989年、台湾の南北を繋げる高速鉄道の建設構想が浮上しました。
1993年になると高速鉄道の建設案が可決されたことで、台湾に高速鉄道を走らせるという建設計画が本格的に検討され始めました。
この一大建設事業にあたり、受注を激しく争ったのはドイツとフランスによる欧州連合と、そして日本の企業による日本連合でした。
日本連合は、三菱重工、川崎重工、東芝、三井物産をはじめとした4商社らによるチームを組成し、新幹線技術を軸に交渉を展開します。
しかし、1997年にはこの競争において日本は敗北が濃厚となります。欧州連合が建設案件への入札に勝利したことで、ほぼ日本連合による受注は途絶えたかと思われたのです。

流れが変わり始めたのは翌年1998年になってからで、不幸なことにドイツで列車の脱線事故が起き、死者は100名を超えるドイツ史上最悪の列車事故が起きてしまいました。
さらにその翌年、1999年9月21日には台湾でマグニチュード7.6の大地震が発生し、多くの死者、行方不明者、負傷者を出す災害に見舞われます。
これは921大地震と呼ばれ、20世紀の台湾における最も大きな地震でした。

そうした中で日本は台湾と同様に地震が頻繁に発生している国であるのに関わらず、1964年の新幹線開業以来、一度も重大な事故を起こしていないという信頼性に対する評価が高まっていきました。
1999年には再度入札が行われ、日本が大逆転で車両システムを受注することとなりました。

ただし1999年の再入札の前には、土木構造物などのインフラ部分はすでに欧州仕様で工事が発注されていたため、日本の受注は車両や電気、信号システムなどにとどまりました。
全てで新幹線仕様を採用するということは叶わず、ドイツやフランスなどの欧州のシステムと日本のシステムが混在することとなりました。
そのため、ドラマ「路(ルウ) ~ 台湾エクスプレス ~」の中でも、大井物産側は欧州連合側との調整で苦悩する様子も描かれています。

当初2005年を予定していた運行開始日から2度にわたる延期。
そして1999年の受注から、実際の2007年の運行開始までの8年間に渡る関係者の頑張り、そして苦労。
台湾の南北を結ぶ高速鉄道を走らせるという、まさに一大プロジェクトとなりました。

高鉄新竹駅
[建築] [Canon]新竹高鐵車站より